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2003年7月23日に3人で始まった会社は、それから20年が経ち、10倍の人数規模になりました。Bit Beansの経営を、2人はよく船旅に例えて話しますが、20年の間、多くの人が船に乗り込んでは降りて行きました。大風、大波、転覆しそうな嵐などいくつかの転換点を経験し、浮きつ沈みつ続けてきた20年。会社の形態としてはめずらしい「2人代表制」のBit Beans、出村・森、2人の代表取締役がその軌跡を振り返り、次の時代への想いを語ります。
目次
問題となる出来事の後に、成長がある。いくつかの転機を超えて
20年前、出村・森2代表の年齢は、経営者としては弱冠の30歳。今の2人を見ていると、経営判断は安定しブレることがないように見えます。しかし、これまでにいくつかの転機があり、段階的に成長を続けて今がある、と言います。そして成長はいつも、トラブルの後だったと─
出村 Bit Beans最初の転機は、わたしが妊娠・出産したことでしたね。2005年の2月に妊娠がわかったので、創業からまだ1年半のころ。社員は5人くらい、中心的な働き手なわけですから、当然、妊娠は喜ばれませんでした(笑)。でも5ヶ月の産休・育休を経て復帰をしたら、会社の様子が変わっていたんですよね。以前の森さんにはどこか他人事のような様子があったんだけど、それが、リーダーらしい顔つきになって、別人のように感じられた。
森 笑・そうしないと動かないからね。誰かが引っ張らないといけない状況だったから。
出村 「トラブルが人を成長させる」。そんなことを感じた最初の出来事でした。子供が産まれても居場所が欲しい。それがわたしの設立当時の大きな願いでもあったので、復帰した時にそれまで以上にBit Benasが強い会社になったことに大きな安心感を抱きました。
当時はまだハードな勤務体制が残る業界で、妊娠・出産で辞めていく女性社員も多くいた時代。社長である出村が産休・育休を取得したことで、Bit Beansでは出産後も働き方を工夫して継続していくことを選ぶ機運があります。一方、復帰後安定したかのように見えた会社も、しばらくすると今度は売上の低下、という問題に直面することに。
森 創業時は、営業をかけてどんな小さな仕事も丁寧に対応していたのに、だんだんと仕事があることが当たり前、という感覚になってしまうんでしょうね。もっと大きな仕事を選ぶべきではないか、賞を取れるような派手な仕事をしないと。そんな言葉が社内から聞こえてくるようになって。
出村 税理士さんに右肩下がりのグラフを見せられて「そろそろ考えた方がいいですよ」という言葉で、ハッと目が覚めました。
森 「もっと良い仕事を」って、上を目指しているように見えて、単に傲慢になっていただけだった。全ての仕事は大切な仕事、全てのお客様にきちんと向き合う姿勢を持とう、と社内に説いて持ち直しました。
間違っていることを「間違っている」と言えること。それが物事を正常化する
社会の変化にも大きく揺らされたと言います。2011年には東日本大震災、2016年には、ワークライフバランスの改善を求める動きが活性化し、日本中で働き方に大きな意識改革がありました。小さな会社にありがちな「社員との距離の近さ」が、ここで大きな苦悩を産みました。
出村 東日本大震災では多くの企業が採用しぶりを行ったため、優秀な人材を中小企業が採用できるチャンスでもありました。そこで大きな発展につながり、社員数はどんどん増えていきました。そんな折、ワークライフバランスの波が押し寄せて─
森 うちらにとっては、しんどい時期だったね。
出村 ある意味、Bit Beansの社員は時代の流れに敏感で「ブラック企業では働けない」という意識を持つ社員がたくさん出てきました。それまで当たり前のように残業していたものが「残業になるからこの仕事はできません」と、なる。けれど、お客様の方はまだそこまでの意識ではなく、土日にも仕事は進めなくてはいけない。正義感や多様な価値観に揺らされて社員も苦しかったと思うけれど、どうすることもできず、ただ闇雲に自分たちで仕事を巻き取って働いていました。
森 働かなきゃいけないけれど、働かせることができない。けれど「辞めて欲しい」とも言えない。「社員を守りたい」という気持ちでいっぱいいっぱいになって。
出村 辞めさせたくなかったし、自己犠牲で人を守っているつもりになっていた。でも今思えば、ただそれは弱かっただけなんです。想いは言語化して、間違っていることはちゃんと「間違ってる」と言葉にしなくてはいけない。言えない弱さが問題を複雑にするということを、この時に学びました。
森 「辞めたかったら辞めればいい」んですよね。無理はお互いのために良くない。人に、執着しちゃってたのを手放して、正しい方向に向かうために成長できたのは、この時期があったからこそです。社員に育てられてきたんですよね。
Bit Beansは、中小企業退職金共済への加入(2014年)、誕生日サイコロ(出目×5000円支給)や、子供手当の支給、飴ちゃんシステムなど、福利厚生も充実した会社です。「社員を守りたい」その気持ちは、そうした制度の充実にも表れています。
問題は複合的に考える。複数のことを同時に解決する方法を探すこと
2020年、コロナのパンデミックの波は人々の暮らしに大きな不安をもたらしました。Bit Beansもすぐに自宅勤務となり、広告業界の仕事はパタリと止まりました。この時Bit Beansで始めたプロジェクトが童話の読み聞かせサイト「ペケロンパ」です。出村の亡き祖父である出村孝雄の物語を、読み聞かせ動画として制作するプロジェクト。今だから言える、この時の想いとは。
出村 前年の売上がよかったので、仕事がなく売上が立たないことはひとまず置いておいても、突然自宅から出れなくなり、恐ろしいニュースが日々流れているのに仕事もすることがない、その状況の社員のメンタルが心配でした。それと、この嵐の中、Bit Beansという船の存在感をなんとか維持すること。また社会を構成するイチ企業として、社会貢献の視点も重要な課題でしたね。
森 ペケロンパの事業は、出村の発案ですが、聞いた瞬間に「やろう!」と即答したことを覚えています。
出村 多くの課題を解決するために「ピタリ」とはまる1つのこと。そういうものがあることを、経営者になって知りました。ペケロンパのプロジェクトもそのひとつです。
その後の売り上げ挽回は、社員の力が大きかったと言います。
嵐に揺らされている船の画像を使って、「みんなで水を汲み出そう」「みんなでこの船を守って欲しい」と涙ながらに社員に訴え、そしてそこからの挽回劇は目を見張るものがありました。
出村 真実や正しいことを言葉にする、目を瞑らない。そういう基本的なことをこれまでのことで学べていたからこそできたことでした。今の大変な状況を、隠さずそのままわかりやすく見せる。そして不安がらせるだけでなく、やるべきこともセットで提示する。あのとき各チームに依頼したミッションで、Bit Beansが立て直せたと思っています。
森 本当にそうだね。方向性は示せたけれど、頑張ったのはみんな。頼っていいんだ、頼りになるんだ。とうことをわたしと出村が実感できた意味は大きかったと思います。
創業以来、変わらない想い。100年続く「灯台」のような会社に。
2022年度決算では、過去最高の売り上げを記録し、現在人数も過去最大となりました。今のBit Beansはお二人の目にどう映っているのでしょう?
森 会社の中は今一番面白いですよ。過去イチ面白いメンツが集まってる気がする(笑)
出村 自分で「楽しむ」ことを知っている人が多いよね。誰かに楽しみを作ってもらうことを期待していない、自由な人が多い。
森 そう。本来の意味での自由みたいなものを持っている人が多いんだよね。
出村 それが社風になるならいいな、と思います。自分の人生を心底楽しめないと人は、なかなか人を幸せにすることはできないと思うから。まず自分で「楽しむ」ことを知る人であってほしい。
森 楽しみながら常に今より少し上、少し先のことをしていく。現状維持は停滞でしかないのだから、いつもチャレンジしていくこと。それが大切だね。
2021年には「仕事は壮大なゲームだ」として、新しい社内制度を整備しました。出村・森が考えた仕組みの中には「仕事を楽しむ」という想いや理念が溢れています。そして、楽しんで仕事をすることがお客様へのより良いサービスへとつながるのだと、2人はいいます。
出村 例えばギスギスしちゃうようなやりとりとかしちゃうことあるじゃないですか。でも別に、本人がそれを望んでいるわけではないですよね。Bit Beansの社員が仕事に関わることで、そういうギスギスがなくなって、心地よいものになるといいなと思う。
森 船や航海に例える経営の中で、「灯台」というのも2人の中では重要な意味を持っていて、Bit Beansは本当は「灯台」のような存在になれればいいなと思っているんです。あそこに行けばいい、あれを目指せばいい。遠くにいても安心できる光を放つ「灯台」。それが、Bit Beansでありたいなと。
Bit Beansの今年のスローガンは「心地よさを追求して、人を笑顔にする」です。仕事でサービスやソリューションを提供するだけでなく、相手の心地よさを考えながら行動し、その人の笑顔を引き出せるようになるのだと決意を語ります。
最後に2人に「次は、この先の20年後を見ているんですか」と聞くと、笑いながら「100年後」という言葉が返ってきました。
会社の規模、大きさは関係ない。スター選手が必要なわけでもない。けれど大切なものを「大切」と言える仲間が集う「灯台」のような企業であれば、100年続くのだ、と─。
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